見せ方

例えばR31スカイラインとR32スカイライン
あれだけ角ばっていたスカイラインが丸くなった。優しくなった。


例えばシルビア。
S12とS13の間に日産に何があった。


例えば初代カローラと現代のカローラ
名前は同じカローラなんだが、本当に同じ車か?


例えばゴルフIとゴルフV。
同じメーカーが作った同じ車名を持つ車なのかこれが?




以前・・・そうですね、20年ほど昔に比べ、現代の車は丸くなったという印象を持つ方も少なくないとは思います。
いや、10年前でもいいです。5年前でもいいです。
とにかく、出てくる車出てくる車がどんどん丸くなってきている・・・そう言いきっても過言ではないでしょう。


では何故、丸い車だらけになってきているのか。


一つは生産技術。
車自体の技術、ではなく。


例えば1980年代の傑作小型車の一つとして数えられる、フィアット・パンダ。
この車はイタリア人・・・強いてはヨーロッパの足となるべく開発された車で、
事実、イタリアでは・・・そうですね、日本で言うところのアルトとか、ミラとか、そういう存在でしょうか。
足となる存在になるためには、まず第一に手に入れやすい・・・つまり、価格の安さが不可欠となります。
それを実現するために、ある意味究極とも言える方法をフィアット、そしてこの車のデザイナーであるジウジアーロは採りました。


車のデザインから曲面を排除する。


このパンダという車、スタイリングの全てが平面で構成されています。
ガラスももちろん平面。
実は鉄板やガラスを湾曲させるのには、意外とコストがかかるのです。
ジウジアーロはパンダをデザインする際に、車体を全て平面にデザインすることにより、
生産コストの削減を図ったというわけです。
それによりパンダの価格は安価になり、イタリア人の足となったのです。


さて、生産技術。
車自体の技術ももちろん、初代パンダがデビューした1970年代に比べて向上していますが、
車を生産する技術も向上しています。
鉄板やガラスを曲面に加工するコストも、以前よりは下がっています。
コスト的な制約が少なくなったわけです。
そうなると、デザイナーは色々やってみたくなるんでしょうね。
デザインの自由度が上がったら、そりゃ丸い車も増えるでしょう。




次は、ボディサイズの向上。


上記のように、カローラとゴルフ。
いずれも世界を代表するベーシックカーです。
いずれも、初代と現行のデザインには大きな違いがあります。
ボディサイズも、初代と現行型では大きな隔たりがあります。


例えば初代カローラは現代のプラッツ程度のサイズでした。
初代ゴルフはルポと同じくらいですかね。


何故ボディサイズが大きくなったのか。


衝突安全基準クリアのため、です。


これらのカローラ、ゴルフがデビューした当時に比べ、現代の衝突安全基準は相当厳しいものになっています。
衝突安全性を高めるには、ボディの構造をあれこれ工夫する方法もありますが、
ボディサイズを拡大するのが一番手っ取り早いんです。
サイズを大きくしてスペースを稼いでおけば、ぶつかった際の運動エネルギーを減少させることが出来ます。
1998年に軽自動車の規格が改正され、各社の軽自動車のボディサイズが一斉に拡大しましたが、
これの狙いがまさに「衝突安全性の向上」でした。
これにより、軽自動車の衝突安全テストの基準値が40km/hから50km/hに改められました。
まぁ、40km/hだろうが50km/hだろうが衝突安全基準なんてどっちも同じで、
80km/hでぶつかれば今まで通りちゃんと骨まで砕けて死んじゃう
んですけどね(C)福野礼一郎


さて、大きくなってしまったボディサイズ。
どう見せるか。


ボディサイズのとおり、デカイ車ということを見せつけてやってもいいのだが、
時代が時代だ。エコだ、環境だ、低燃費だ、コンパクトだ。


小さく見せる方向に向かったわけです。


サイズが同じなら、平面主体で構成されたデザインよりも曲面主体で構成されたデザインの方が小さく見えます。
例えばトヨタの先代ヴィッツとbB。
この2台は中身は一緒、というかbBはヴィッツから派生した車種で、トレッドとかホイールベースとかそういった数値は全く共通なんですが、
ご存知のようにヴィッツは曲面、bBは直線を主体としたデザインを施されています。
と言っても、bBは昔の車に比べれば十分丸いんですが。
さて中身は一緒でも、曲面と平面というデザイン上の違いがあると、外見から受ける印象がかなり異なったものになります。
ヴィッツとbB。bBの方が何となく大きいイメージがありませんか?


もう一つ例を。
R33スカイラインとR34スカイライン。特に2ドア。
R33からR34にモデルチェンジする際、ボディサイズはほんの少し小さくなりました。
ホイールベースも短くなりました。
でも、何となくR34の方が大きく見えませんか?
何故か?もちろん、デザインの違いです。
言うまでも無く、R33とR34のデザインを比べるとR33の方が丸みを帯びたデザインとなっています。


数字は一緒でも、その見せ方によって印象は大きく変わる、のです。